県内最古の酒蔵・右田本店
400年以上、益田の地で酒造りをされている右田本店さんが、昨年、県内初のウイスキー蒸留所として、新たにウイスキーの製造・販売を始められました。
「伝統の継承と進化」を理念として、新しい挑戦をし続ける右田本店さんの代表・右田隆さんにお話を伺いました。
※右田隆さんの過去記事へのリンク
帰ってきて感じたのは“危機感”でした。
「伝統を繋げることは、進化していくことでもある」日本酒の可能性を信じ、未来を模索する
右田本店さんの公式HPはこちらから
日本酒だけで続けることに限界を感じていました。
-ウイスキーの販売を始めようと思ったきっかけを教えてください。
地元の酒蔵で地酒として、地元益田の方たちに飲んでいただいたりとか、イベントの際に使ってもらったり、ずっと地元の皆さんに大切にしていただいてきました。
でも地酒として島根県全体で取り扱っていただけるかっていったらそうじゃない。
やっぱり浜田だったら浜田の地酒を使うし、近くだったら津和野だけど、津和野は津和野のお酒を使う。なかなか日本酒、地酒っていうだけでは、消費量を増やしていく、販売量を増やしていくってのは難しくなっている。
何か新しいことをしないと、このままでは、厳しいな、難しいなっていうのを感じていました。
そうした中で、島根県内でいうと、焼酎を販売してる蔵は結構あるけど、ウイスキーに関しては、まだなかった。
だから、島根県全体の、地酒じゃないけど地元のウイスキーとして、県内で広く取り扱っていただけるんじゃないかなと思ってはじめました。
そうしたら、松江とか出雲の方でもすごく、地元のものとして取り扱ってくれることが増えた。
日本酒ではそこまでなかったんですけど、ウイスキーだったら、松江、出雲でも、スーパーとか、道の駅とか酒屋さんで取り扱っていただけたんです。
-ウイスキーの販売を島根県内限定にしておられますが、何か理由があるんでしょうか。
島根県限定だったら、購入するために、広島とか山口とか県外の方がこっちに来て、ウイスキーを買うだけじゃなくて、他のところでもお金を使っていただける。もしかしたら泊りがけで来るかもしれない。
県内限定にしたことによって、この益田市の経済にちょっとでも力になれたら、そういう思いがあります。
うちが1602年創業なんですけど、地元の方が飲んでくださったり、贈り物などで購入していただいたりしたおかげで、400年以上続けてこれたっていう思いがずっとありまして、地元に恩返しではないですけど、ちょっとでも貢献できたらな、というふうに思って県内限定にしたっていうところが大きいです。
噂を聞きつけた県外に出ている方たちが地元に帰ってきて、お土産に買って帰ったり、購入するために戻ってきたりっていう話を聞くと、嬉しいですね。
新しい挑戦。困難もあるけど嬉しいことだってもちろんある。
-これまでずっと日本酒を作っておられて、ウイスキーを作るってなるとやっぱり1から勉強されたんでしょうか。
そうですね。
近くだったら鳥取の方にウイスキーを作る会社があるので、そこで勉強させてもらったりとか話を伺ったり、そういうことを、積み重ねて、やっていったっていう感じですね。
-6種類のウイスキーがありますが、作る上で一番、苦労した点というか、ここは大変だったなっていうところを教えてください。
同時に6種類の新商品を出すこと自体、結構大変なんですよ。でも、やっぱり1種類よりも2種類、2種類よりも3種類っていうのもあるし、ラベルの色も少しずつ変えて、6種類棚に並べたら、見栄えも良いいっていうこともあって6種類になりました。
ウイスキーは日本酒と違って、調合とかブレンドが必要で、その割合で味の幅が広くなる。幅が広いからこそ、商品、ラインナップが広がってくるので、その中から、一番いいバランスで、個性の違うものを6種類決めるっていうところが結構大変でした。
でも、結果的に6種類出したことによって、相乗効果じゃないですけど、どの種類も、大体平均的に購入していただいています。もちろん受賞したときはその商品が多く出ましたけどね。
-もともとウイスキーがお好きで、味にこだわりがあったんですか。
実際そこまでお酒があまり強くないんですけど、お酒が好きなことは好きなので、いろいろな種類のお酒を飲んだし、ウイスキーももちろんおいしいと思っていました。
だから、やっぱり自分もおいしいと思った6種類を売ってるっていう感じですかね。
-右田本店さんといえば日本酒のイメージだとは思うんですが、ウイスキーを始めた際や賞を取った際のお客様や、取引先の方の反応はどうでしたか。
最初は、「昔から日本酒をずっと作っていたところがウイスキーを作るなんて」というような声が、結構あるかなって考えてはいました。
でも、実際にはそういうふうに言われる方って少なかったです。
取引先の方も、日本酒の一部は海外ですごく売れているという話はありますけど、日本全体で見たらやっぱり販売自体が落ちてきていて、消費量は減ってきているということを分かっている方が多いので、いい挑戦ですねみたいな感じの声の方を断然多くいただきました。
酒屋さんとか、スーパーさんとかも最初は半信半疑で取り扱ったかもしれませんけど、反響で結構売れるようになってきたので、そういう意味では、酒屋さんの力にもなれてるかなっていうふうに思います。
やってよかったな、ともちろん思いますし、今後もやる気に繋がるような、応援の声っていうのをいっぱいいただいてます。
-ウイスキーを販売したことによって、日本酒の方にも影響がありましたか
そうですね。
正直、松江とか出雲の方では、この右田本店であったり、お酒のブランドである「宗味」を知らない方って結構いたんですけど、そういう知らない方にも、知っていただくことができましたし、日本酒の取り扱い自体も、増えましたね。
ウイスキーを最初にとっていただいて、日本酒もあるなら、日本酒も提案してくださいっていうような形で提案させていただいたりすることもありました。
常に頭にあるのは「地元への恩返し」
–以前の記事でも、「伝統を守りながら新しいことにも挑戦し続けたい」と話されていました。このウイスキーへの挑戦っていうのはもちろんですし、ホームページのリニューアル(HPはこちら)や、アニメーションを使ってウイスキー(紹介動画はこちら)・日本酒(紹介動画はこちら)を紹介するなど、新しい取組をたくさんされていますが、そういった取組は右田さんの発案でされるんですか。
それもありますし、他の従業員からの発案もあります。すごく、いいアイディアを持っているので、一緒に話し合って相談してっていう感じですね。
これまでは発信とかあんまりしてこなかったんですけど、今は発信がすごく大事な時代になっていますので、そういう部分で、どんどん新しいものはとり入れていくけど、残すべきところは残したい。
残すべきところっていうのは、ずっと続けてこられたのは、地元の人に支えてきていただいたっていう想い、そういう部分は、絶対にずっと引き継いでいかないといけない。少しでも地元に恩返しじゃないですけど、その想いは常に頭にあります。
-これからの抱負だったり、こうしていきたいなっていうことがあれば教えてください。
今は島根県限定のウイスキーとして販売してますけど、ゆくゆくは、全国でも販売できるような形であったり、右田本店としてウイスキー以外の新商品もとは思っていますね。
その時代その時代、お客様の求めているものは違うと思いますし、もちろんブームも日本酒だったり、ワインだったり、ウイスキーだったり異なる。そういう、時代の流れに乗りながら、新商品を積極的に販売してって、どんどんどんどんPRできるものを増やしていきたい。取引先もどんどん広げていきたいっていうのもあります。
それで、右田本店がある島根県や、益田市を広く発信していきたい。
例えば日本酒でもいいですけど、「右田本店の日本酒」が県外でも有名になったら、それを飲んだり、購入したりするために市内に来られるっていう方も増えますし、そういった形で地域の力になって、右田本店としてもどんどん大きくなっていきたいって思っています。
益田市が、もっと発展したりとか観光客が増えたりとか、人が増えたりとかってしたら、もうそのまま、商売にも直結してきますよね。切っても切り離せない。
やっぱりこの地域と右田本店の両方が、一緒に発展していく、それが一番理想的な形なんです。
-貴重なお話ありがとうございました!
文責:益田市産業支援センター