益田市の国道191号線沿いのガソリンスタンド[以降SS(サービスステーション)]。
車で入っていくと、スタッフの明るい声が響く。
そんな益田石油緑ヶ丘SSで出迎えてくれるスタッフの一人が岩本靖子さん。素早く給油・窓をふき、笑顔で丁寧にお客様を見送る姿が印象的です。
「お客様一人一人としっかりお話しをして、寄り添っていきたい」そう語ってくださった岩本さん。今回はそんな岩本さんに益田石油で働く中でのやりがいや、益田での暮らしの魅力についてお話しをしていただきました。
自分はお客様に一番近い存在
益田市に生まれ、高校まで益田で過ごしました。大学進学とともに県外で暮らし始めましたが、いずれは益田で働きたいという思いが昔からあったんです。大学卒業後は益田市に支店がある企業に就職し、その後島根県内で事務やコールセンターの仕事を経験したあと、益田市に戻ってきました。
ーUターンとともに益田石油株式会社に就職した岩本さん。現在緑ヶ丘SSで給油やカーメンテナンス、新人育成などを担当していますが、入社当初の想定とは違ったそう。ー
入社当初は事務職に就くつもりで就職したんです。でもそのタイミングで緑ヶ丘SSの人員が足りないから少しだけスタンドどう?と社長に誘われてしまって。短期間ならと承諾しました。それが、あれから3年以上経った今でも緑ヶ丘SSにいるんです。自分で給油するなんて思ってなかったですし、ましてや外で仕事するなんて考えてもみなかったので、意外や意外という感じです。もちろん車の知識もありません。いまだに車の車種もわからないので「何の車だった?」と聞かれても、「白い大きい車です」としか答えられないんです。
でも、だからこそ、私はこのSSのなかで一番お客様に近い存在だと思っています。お客様に尋ねるときに、わかりやすく伝えることができる。車のことに詳しくないお客様でも気軽に話しかけられる存在になればいいなと思ってお客様と接しています。詳しいお客様は自分で知識がありますし、整備士の資格を持っているスタッフに直接聞きに行かれるんですが、女性で車に詳しくない方なんかは「これって聞いていいのかな?」という戸惑いなどもあると思うんです。給油をしながら、「私も車の事はあまりわからないんですよ」というようなたわいもないお話の中からとっかかりを作っていくことを意識しています。
お客様も含めたみんなが見守ってくれるSS
ーガソリンスタンドという全く知らない世界に飛び込んだ岩本さん。もちろん最初は苦労することも多々あったのではないでしょうか。ー
まずは立ち仕事、そして外の仕事ということで夏は炎天下、冬は寒さという気候の厳しさに戸惑いました。というのも前職のコールセンターでは機密情報を扱う関係で窓のない閉鎖された場所で働いていたんです。今日は暑かったのか寒かったのか、晴れてるのか雨だったのかもわからない状態で何年も過ごしてきました。そういう中で、次は違う環境で働きたいとちょうど考えていたところだったので、「今日は暑かったね」「だんだん涼しくなってきたね」というようなお客様との会話が新鮮でした。季節を感じられて、お客様とたわいもない天気のお話ができるというこの環境が自分には合っているなと感じています。
金銭的には前職の方が良かったですし、欲しいものがすぐそこで手に入るというような点では、ある種都会的な便利な生活ができていたのかもしれません。でも益田に帰ってきて益田石油で働くようになってからも、実は苦労というものはあんまりしていないんです。冬のすごく寒い日におばあちゃんとおじいちゃんが、「まあ、あんた寒いねえ。ちょっと手出して。」というので手を出したらそこにたい焼きを置いてくれて。ありきたりですけど、人があたたかいというのを直で感じられるというのが良いところなんだろうなって思います。働く環境的には屋外ということで厳しい部分もありますが、プラスマイナスで考えると断然プラスの方が大きいなと感じます。
常連のお客様もたくさんいらっしゃって、そしてみなさんよく見てくださっていますね。「新しい子が入ったんだね」などとお話ししてくださるということは、お客様もそれなりに興味を持って私たちのことを見てくださっているということなんだと思います。それがフルサービスのいいところだと思っています。障がいのあるスタッフもいるのですが、そのスタッフをお客様も含めてみんなが見守ってくださっているというのはすごくあたたかいなと思いますし、益田石油の特色なんだろうなと感じています。時代がフルサービス縮小という流れになっていても、お客様からは「ここだけは絶対にセルフサービスにしないでね」という声をたくさんいただいています。
SSはチームワーク
ー岩本さんが益田石油の特徴だな、いいところだなと感じる部分はどんなところでしょうか?-
みんながみんな同じじゃなくていいというところが益田石油の良いところなのかなと思っています。その人に合った声のかけ方だったり、その人に合ったアドバイスの仕方だったりが考えられていて、しっかり方向性をフィードバックしてもらって目標設定もできます。毎月一度のミーティングではみんなが忌憚ない意見を言い合える。ある種ファミリー的な感じがいいなと思っています。
また、女性や障がい者が働く上でのサポート体制もしっかりとあるなと感じています。私はもともと股関節が悪かったので、お客様が車で入ってこられたときに走ってご案内に行けなくて、どうしても車が先に入って行ってしまっていたんです。でもそんなときに先輩が先に行って車を止めてくださって、それから「じゃあお願いします」と私に譲ってくれる。SSって、一人のスタッフが一人のお客様にガソリンを注いで終わりというイメージが強いと思うんです。でもどちらかというと、チーム作業なんですね。みんな同じじゃなくていいし、お互いの凸凹や得意を活かしあえる。これは入社してから気づいた意外な事でした。
「みんなで何かをする」楽しさ
ー仕事以外の趣味などの時間はどのように過ごされているのでしょうか?-
小学生のころからずっと吹奏楽をやっていて、トロンボーンを演奏しています。社長ともトロンボーンを通して知り合いました。
今はジャズバンドとアンサンブルに参加しています。
最初は友達に誘われたのがきっかけで始めたのですが、今でも大切な趣味の一つになっています。一人で演奏するのももちろん楽しいんですが、アンサンブルなどでみんなで合わせたときに、おもしろさが何倍にも広がるというのを知ったときに、その魅力に取りつかれてしまって。みんなと一つのものを作り上げていく、みんなと何かをするのが好きということが、今の仕事にもつながっているなと感じています。
ー趣味としての音楽は、岩本さんの暮らしの中でどういった役割を担っているのでしょうか?-
音楽活動は、会社以外の人とつながる、新しい出会いをもたらしてくれる良いスパイスになっています。いろんな職種の人が集まってきて、いろんな人生経験を積んだ人がいる中で、自分の価値観と違う価値観に出会える良い時間です。前職のときには朝早くから夜遅くまで仕事をして、休みの日も「ちょっと心配だから」といって出勤することもあったので、今は仕事とプライベートのバランスが程よくとれていて、メンタル的にも安定できる環境にいるなと思います。
何もないことが魅力
ー益田・鹿足で暮らす魅力はどんなところでしょうか?-
益田って、「何もない」とよく言われますが、「何もない」のが良さだと思っています。自分が何かをしたいと思ったときに「じゃあやろうよ」と言ってくれる人が必ずいて、自分たちで何かを作り出していけるということが大きな魅力だなあと感じます。
益田石油のファンを増やしたい
ー最後に、岩本さんがこれから目指すところを教えてください!-
一昨年、股関節の手術のために長期休暇を頂いたことがあったんです。その後復帰した時に、お客様から「やめたかと思ったよ」「おってくれてよかったわ」と声をかけていただいて、そのときはこんな私だけどここにいてよかったんだなと思いました。
これからも、お客様に選んでいただけるような、会社の一員になりたいです。「私がいるからこのガソリンスタンドを選んで来てくれる」というお客様を増やしていけるようになりたいですね。そういうお客様が一人でも二人でもいるということが私たちにとっても嬉しいですし、会社を長く続けていくという上でも大切なことだと思います。
これからも笑顔と元気で益田石油のファンを増やしていきます!
文責:連携のまちづくり推進課
取材・文章:一般社団法人豊かな暮らしラボラトリー