益田20地区を巡る 真砂地区編
のどかな昔ながらの⾵景が広がる真砂地区。
現在この地域を拠点とし、公私にわたりまちづくりに関わる活動をしているのは、村岡宙さん。
「真砂はお⺟さんのお腹の中の様なところ。⼦育てするにはいいところよ」という⾔葉を受けて移住を決めた。
そんな今回の主⼈公の移住記を取材する中で、特に印象的だったのは、キャリアと⼦育てをどちらも「暮らし」の中で捉えるという価値観。
多くの地域での経験を経て、真砂で実現するに⾄った今の暮らしと、その中で⼤事にしている「思い」についてうかがった。
地域にいきづく「暮らし」と「感覚」を求めて
村岡さんの故郷は、自然や人の繋がりが豊かな、いわゆる田舎町。
季節ごとに地域のお祭りがあり、大人が率先して集落の子どもを見守ってくれる、そんな環境で育った村岡さんは、おのずと「誰かのためになる仕事」を生業とすることを意識するようになる。
そして進学した大学では、都市計画・地域計画を専攻。
研究室での活動を通じて地域の暮らしや文化に触れる中で、「地域に入ること」の楽しさに魅かれていったそうだ。
「地域には大切にして来られた暮らしがあって、まちづくりではその暮らしの延⻑線上にあるところを目指すものだと考えるようになりました。」
卒業後は、まちづくりに関わりながらキャリアを積むことに決め、兵庫県⻄宮市を拠点としてからは、公私共に専⾨性の⾼い仲間に囲まれ、刺激的な⽇々を送る。
しかし、ちょうど第⼀子出⽣のタイミングで⼼境の変化があったのだそうだ。
「私も⽥舎育ちであり、娘にも⾜の裏に記憶してほしい感覚というものがありました。砂利道、⽥んぼのぬかるみ、⾃然の川のぬめり・・・。都会で『サービスとして』ではなく、⾃分が幼少期に体感したように、ごく当たり前に『暮らしの中で』その感覚を感じとってほしいと思っていました。」
こうした想いのもと「いずれは『⽥舎』に帰りたい」と考えるようになっていた村岡さん。
実際に転機が訪れたのは、夫妻が益⽥に⾜を運んだときのことだった。
「せっかく田舎に帰るなら、その中でも田舎に住もう」
たまたまタイミングよく開催されていた就職フェアで、村岡さんが専⾨とする職種の求⼈を偶然⾒つける。
そこで「いずれじゃなくて今かもしれない」と感じた村岡さんは、直感に従って試験を受け、結果合格。
さらに、村岡さんの決断に対し奥様からの「せっかく⽥舎に帰るなら、その中でも⽥舎に住むべき」という⾔葉もあり、益⽥市に拠点を移し、改修して住める空き家を探すに⾄った。
複数あった居住地域の中から、市の紹介を通じて初めて真砂公⺠館を尋ねた際、館⻑さんからかけられた「真砂はお⺟さんのお腹の中の様なところ。⼦育てするにはいいところよ」という⾔葉が真砂地区を選ぶ決め⼿となった。
⽥んぼと⼭に囲まれるこの地域には、⼤きな通りがなく、⾞の往来が少ないことも関係しているのか、⾵景の⼀部に、⼦どもからおばあちゃん、誰もが思い思いに地域を⾏き来するのどかな暮らしがある。
特に、真砂保育園の「地域まるごと園庭」という活動は有名で、⼦どもたちが地域の中に散歩コースを決め、散歩中に通りかかった地区のお宅や介護施設を訪問するというもの。おじいさん、おばあさんと⽇常の中での会話を楽しむような暮らしぶりに惹かれる移住者も少なくない。
このような魅⼒に溢れる地域で、村岡家の暮らしが始まってから約6年。
実際に、真砂での⼦育てに対し抱いている印象について、村岡さんはこう語った。
「今振り返ると館長さんの⾔葉通りだと思います。⼦どもたちは、地域の旬の⾷材をいただき、地域のみなさんと交流し、その懐をお借りして、⾃分で考え⾏動できる様に育っていると感じています。⻑⼥がこの春、保育園を卒業し、⼩学校に上がりますが、これから何を『やりたい︕』というようになるか、私⾃⾝にとって⼀番の楽しみです。」
地域の中でちょっとした挑戦と変化を大切に
真砂地区には、⼦どもにとって体験と学びの可能性が環境の中に存在しているが、村岡さん⾃⾝も仕事の傍ら住⺠として地域をフィールドに活躍する。
「年2回の道や川の草刈の作業は⼤変ですが、地区のみなさんと⼀緒に作業し、綺麗になったときは清々しく達成感があります。また、作業中や休憩中に交わす会話も楽しいです。」
更に、村岡さんが地域の⾃伐林業を進める団体を⽴ち上げたのは、数年前のこと。
真砂地区内の必要不可⽋なライフラインである⼭道を、少しでも⾒通しがよくなり、安⼼安全に利⽤できるように、住⺠メンバーと共に伐採搬出を始めた。
「山林に手を入れていくことは、技術力も必要であり、困難なこともありますが、団体のみなさんに教えていただきながら挑戦しています。」
今では市や地区の皆さんからも喜ばれる活動となっている。
「真砂には、地区の住⺠とその現在・将来を⼤切に思い営んできた暮らしがあります。それを⼤きく変えたいわけではなく、私も地区のみなさんと⼀緒に、ちょっとした挑戦・変化を⼤切にし、暮らしていければと考えています。」
求めた環境で子育てをしつつ、仕事に地域活動にとまちづくりをライフワークとして活躍する村岡さん。
このように、キャリアと⼦育てをどちらも「暮らし」の中で捉え、多面的に活動する営みは、田舎でこそ求められているのかもしれない。
取材:一般社団法人豊かな暮らしラボラトリー
文責:益田市人口拡大課