2025年2月27日 (木)

益田のひとづくり益田と関わりたい方,私にとっての益田生きがい,趣味地域づくり,大学連携

「大学生のライフキャリア」大正大学 神谷ここのさん

益田市では、大学生の「やってみたい」を実現するための活動支援を行っています。今回は、大学を1年間休学し、一般社団法人豊かな暮らしラボラトリー(以下、ユタラボ)でインターン生として活動しながら、益田の暮らしを体験した神谷ここのさんにお話を聞きました。

世代を超えて盆踊り、海沿いの小さな町で過ごした幼少期

-本日はよろしくお願いします!最初に、簡単な自己紹介と、益田に来るまでのことについて教えてください。

神谷ここのです。大正大学地域創生学部の3年生です。

私は、宮城県気仙沼市で生まれ育ちました。リアス式で知られる三陸海岸沿いで、美味しい魚が獲れるところです。大学進学を機に東京に上京し、2年間大学生活を送ったのち、休学をして益田市にやってきました。普段はユタラボでインターン生として活動をしています。

-小さい頃はどんな子どもでしたか?地域での思い出などもあったら教えていただきたいです。

私の地元は益田と似ているように感じます。すぐそこに海があって、人口が少ない分、ご近所との交流が深い。小さい頃は近所の友だちと毎朝集団登校をし、夏休みには子ども会で流しそうめんや花火大会を楽しみました。盆踊りでは地域のおじいちゃんと一緒になってステージで踊ることも。そんなつながりの深い地域で、のびのびと育ちました。

気仙沼出身だと言うと、東日本大震災のことを聞かれることも多いのですが、私はちょうど幼稚園から小学校に上がる年に被災しています。ただ、幸いにも私の周りにはそこまで大きな被害はなく、こういった関係性の中で育ってきたこともあり避難所生活もほとんど苦ではありませんでした。

-地域の方と、まるで家族のような関係だったんですね…!

 

 

「地域について学びたい」民話探究が進路選択のきっかけに

-高校時代はどのような学生生活を送られたのでしょうか?

大好きなスポーツに明け暮れましたね。小学校からソフトボールをやっていて、高校では念願のソフトボール部に入部しました。もともと、チームで楽しみながら何かを成し遂げることが好きだったのですが、監督が、まさにそういうチーム作りを大切にする方で。チーム一丸となって、全国大会出場を目標に練習を重ねたことが、とてもいい思い出です。

また、探究活動にものめり込んだ3年間でした。高校2年生から始まった探究の授業がきっかけで、地域に出ることが増えました。気仙沼市では、東日本大震災を機に移住してきた方々が、中高生の探究に関わっていたんです。そうした方たちに背中を押され、地域の活動や行事にたくさん参加したり、やってみたかったことに取り組んでみたりしました。地域活動がとても好きな高校生でしたね。

-高校時代の探究活動ではどのようなことをされていたんですか?

口伝えに残されてきた民話の魅力に引き込まれ、地域に伝わる民話について調べていました。民話は、物語の面白さはもちろん、人が集って語る中で生まれる空気感や、そこでの温かい交流にも魅力があります。私はもともとそういう場にいるのが好きな子だったので、語り部さんのところに出向いてお話を聞かせてもらったり、子どもたちに民話を知ってもらうために絵本を作るイベントを企画したりしていました。

-シニア層も子どもたちも笑顔になれる、素敵な活動ですね。そうした交流の経験から、大学でも地域づくりを学ぶことにしたんでしょうか?

そうですね。活動をする中で、「地域づくり」や「地域コミュニティ」についてより深く学びたいと思うようになりました。私は今、大正大学の地域創生学部地域創生学科に在籍していますが、大正大学を知ったきっかけは自分の探究成果を発表するイベントの際に、大正大学の先生が講評をしてくれたことです。

-高校時代から大正大学には縁があったんですね。実際に大学で地域のことを学んでみて、いかがでしたか?

入学してみると、地域実習をはじめとする学外での学びの機会が多いことに加え、周りにも地域と関わるのが好きな子が集まっているので、刺激を受けることが多かったです。地域で出会った人も、学内で出会った人も、本当に素敵な人ばかりで、大学で地域創生を専攻して本当によかったと感じます。

大学にはラーニングコモンズという学生が自由に使用できる交流スペースがあるんです。私はそこで友だちと話す時間がとても大好きで。たとえば、地域実習とかで出会った人のことや、これから自分がやってみたいことについて、友人と共有するんです。

口にすることで自分が何をしたいのか、何を大切にしているのかが再確認できるし、友人の話から刺激をもらいます。友人の挑戦に影響されてインターンシップを始めたこともあります。私にとって、大学生活に欠かすことの出来ない時間です。

-「地域づくり」という同じキーワードで集まった学生同士だからこそ、交流が深まり、互いに応援し合ったり刺激し合ったりする関係性が生まれたのかもしれませんね。

 

 

偶然の出会いで大学生活が一転、益田暮らしを決めるまで

-ここからは、益田に来るまでの経緯や、益田での日々についてお話をうかがいたいと思います。まずは、益田のことを知ったきっかけについて教えていただけますか?

益田との出会いは本当に偶然でした。大学1年生の時、離島と首都圏の協働について学ぶ実習があり、夏休みに隠岐郡海士町に行ったんです。当初は、海士町に数日滞在したのちに、吉賀高校まで足を伸ばし、アントレプレナーシップ教育を学んで帰る予定でした。でも、ちょうど台風がやってきて、予定より早く海士町を発つ必要が生じ、空白の日ができたんです。それで大学の先生の勧めもあり、吉賀町に行く前に益田に立ち寄ってみることにしたんです。

-すごい偶然!台風がなければ足を踏み入れることがなかったかもしれないんですね!

そうなんです。そのときは少しの時間だったので、ユタラボを見学するだけだったのですが、それがきっかけで、後日、ユタラボ主催の1泊2日の「豊かな暮らしについて考える2日」という益田暮らしを体験するツアーに参加することになって。

そのツアーを通して「益田ってこんなに良い場所なんだ」と思い、2年生の地域実習先として益田を第一希望にして。そこでさらに2週間滞在して様々な方と出会う中で、ここでもっと生活をしてみたいと思うようになり、1年間、益田でインターンシップをすることに決めました。

-偶然出会ったまちで、その後暮らすようになるなんて驚きですね。そこまで益田に惹かれたのはどうしてだったんでしょうか?

直感的に、「ここで暮らしてみたい」と思ったんです。

「益田暮らし体験ツアー」や「地域実習」で出会った益田の方は、みんな楽しみながら生活しているように感じられました。みんなが笑顔だし、地域活動を楽しんでいるのが伝わってくる。

そして、私たちのように市外から来た学生を温かく受け入れてくださって、「どこから来たの」「どうして来たの」って興味をもって語りかけてくださるんです。草むしりをしながらたくさんお話をしてくれるおばあちゃんがいたり、初対面の私たちとも、のびのびコミュニケーションを取ってくる子どもたちがいたり……。

益田で人と交流するときには、ずっと温かい空気に包まれているようでした。私にはそれがとても嬉しくて、ここで実際に生活してみることで、自分がこれからどんな暮らしをしたいのか、立ち止まって考えたいと思うようになりました。

そうやって、益田で暮らしながら自分に向き合うことで、もっと自分のことも知ることができるのではないか、自分の良いところも見えてくるのではないかと感じたんです。

-益田で暮らしたら、自分のいいところや、暮らし方について考えることができるのではないかと感じたというお話、地域の方が聞かれたらとても喜ばれると思います!

 

 

「来てよかった」、たくさんの温かさと笑顔に触れて

-続いて、益田に来てからのことを教えてください。実際に益田で生活をしてみていかがでしたか?

楽しいことも大変だったこともたくさんありましたが、この決断をして良かったと心から思っています。

暮らしの面で言うと、10月から中西地区の一軒家を借りて住んでいるのですが、地域の方が地域行事に誘ってくれたり、お家に招いてくれたりするんです。特にお隣さんには本当にお世話になっています。

私はこの1年間は帰省せずにずっと益田にいようと決めていたのですが、正直、家族や実家が恋しくなるような時期もありました。そんな時にお隣さんが「遊びにおいで」と誘ってくれて……なんと年末年始も一緒に過ごしました。年越しそばをいただいていたら、「大道山の初日の出を拝みに行こう」という話になって、早朝から山登りをしたんです。山頂から拝む初日の出がとてもきれいだったし、お汁粉の振る舞いもあって、身も心も温かくなりました。

お休みの日には、中西地区以外の地域活動に出向くことも多く、公民館で開催されている子どもたち向けの体験活動にもたくさん参加させてもらいました。子どもと一緒に川で鮎のつかみ取りをしたり、合宿に交ざったり……。子どもたちの料理教室に参加をしたときには小学生が大きなオムライスを作ってくれました。

-地域の方と本当に深く交流されているのが伝わってきました!次にインターンシップについてお話を聞かせてください。

私はユタラボで主に地域と関わるお仕事をしています。。若年層を主な対象として、地域の魅力を伝えたり、地域活動への一歩が踏み出しやすくなるように後押ししたり、関係人口の増加を図ったりするような事業が中心です。

たとえば、「益田暮らし体験ツアー」や「地域づくりフォーラム」の企画運営や、益田の出来事や益田に暮らす人の姿についてのSNS発信をしています。また、地域交流スペースとしてユタラボが開かれているときには、スタッフとして運営をサポートし、来館者と交流しながら居心地のいい場づくりに努めています。

-お仕事のやりがいや、特に力を入れていることについて教えてください。

企画に携わったイベントで、参加者の楽しそうな姿を見ると、やりがいを感じます。その笑顔が見たくて頑張っている、という感じです。

「益田暮らし体験ツアー」は、私自身も過去に参加し、とても楽しい時間を過ごしたので、企画をする立場として、今年度の参加者にも同じように楽しんでほしいという一心で準備にあたってきました。その思いが伝わったのか、ツアー中は参加した方の素敵な表情をたくさん見ることができて、嬉しかったですね。ツアーの最後には、「こういう関わりがとても嬉しかった」「こんなことを今後やってみたい」と、地域の方との交流を喜んだり、やりたいことを見つけたと表明したりする感想が多くあって。体験ツアーへの参加を機に、後日あらためて益田を訪れた人もいるんですよ。誰かのきっかけになっているんだなと思うと、大きなやりがいを感じます。

-イベント参加者だった神谷さんが、今は益田に人を迎えたり、益田の魅力を発信したりする立場にいるんですね。なんだか感慨深いです。他にもお仕事をする中で印象深かったことがあれば教えてください。

2月1日に、益田市主催で、ユタラボが運営をする「益田市地域づくりフォーラム」が開催されて、私は司会を任せてもらったんです。140名を超える方にご参加いただいて、そんなに大勢の前で話す機会はなかなかないので、ガチガチに緊張して迎えた本番でした。

でも、ステージから会場を見ると、知った顔がちらほらあって、表情から「応援してるよ」という思いが伝わってくるんです。言い間違いをしたときに、温かい拍手が起こるんですよ(笑)オープニングセッションを終えた後も、会場で出会う人たちが口々に「頑張ったね!」と声をかけてくれました。お仕事の中で、人の温かさに触れる場面はたくさんありましたが、一番近い思い出だと、その「地域づくりフォーラム」が、益田の人たちの温かい人柄を感じられる時間でしたね。

益田には、地域で過ごす時間や、そこでの出会いと交流を楽しみ、大切にしている人がたくさんいるように思います。「あたたかい」という言葉がとても似合う町だとこの1年を通して何度も感じました。市外からインターンシップに来た私に対して、家族みたいに接してくれて、ハラハラドキドキしながら見守ってくれる。そうした人たちに恵まれる機会は当たり前にあるというものではないので、益田に来て本当によかったと、改めて実感しました。

-会場の雰囲気が伝わってくるような素敵なエピソードをありがとうございました!

益田暮らしでの気づき~「楽しい」ということを大切にしたい~

-最後に、益田暮らしを振り返って今思うことや、これからやってみたいことについてお話を伺いたいと思います。益田で暮らした1年間はいかがでしたか?

これまでお話ししたように、地域の方から温かく迎え入れていただき、いろいろな形で交流を深めることができた一年でした。また、ユタラボでインターンシップをしたことで、他のインターン生ともたくさん出会うことができ、それも自分のやりたいことや学びたいことをとらえ直す上でとても大きな影響を与えてくれました。他の子から「地域の人とこういう関係性を築きたい」「こういうことをやってみたい」という思いを聞くたびに、自分も頑張らないといけないんだなと思い、刺激を受けましたね。

-益田での日々も残すところあと少しですが、どんなふうに過ごしたいですか?

これまで通り目の前のことを楽しみながら、地域の方とたくさん交流したいです。残りの日々を思うと、あれもこれもやりたくなって焦りそうにもなりますが、自分のペースを変に崩すことがないように意識しながら、益田暮らしを締めくくる準備をしていきたいなと。まずはお世話になってきた方々1人1人にきちんと挨拶をしたいですね。

あと少しでこの生活が終わると考えると寂しくもありますが、大学生活に戻っても関係性は続くので、今後も継続的に繋がっていきたいと思っています。

-この1年間を通して自分の中でものの見方や考え方に何か変化はありましたか?

私はもともと、「何かやっていないと」「人より頑張らないと」という思いで活動することが多いタイプでした。他の人より頑張って何かに取り組んでいないと、自分には良いところがないんじゃないかと不安になってしまうんです。そういう思いで活動をしていると、自分にとって楽しいと思って始めたことでも、どこか追い立てられるような気持ちになったり、ときに辛い気持ちになってしまったり……。

でも益田で過ごすうちに、そんなに堅苦しく考えないでも良くて、自分の楽しい気持ちを大切に活動することが大切なんだと気づかされました。今までの自分には、「〇〇でないといけない」とこわばっていた部分があったように思うのですが、それがこの1年ではがれ落ちたような気がしています。とても楽な気持ちで人と接することができるようになりました。

-インターンシップを終えてからは、どんなことをやってみたいですか?

そうですね。インターンシップでの業務を通して、地域にも教育にも深く関わることができ、いろいろな視座がもてるようになったと感じています。そうしたこの1年で得た体験を活かせるよう、就職活動に力を入れたいです。

地域活動も、どのような形であれ続けていきたいです。せっかく1年間の休学という大きな決断をしてこの地で過ごしたからこそ、ここで足を止めることなく、1歩ずつ積み重ねていきたいです。

-貴重なお話、ありがとうございました!

文責:益田市連携のまちづくり推進課
文章:一般社団法人豊かな暮らしラボラトリー

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