普段、わたしたちが何気なく通っている道路や橋は、測量や設計、補償、施工管理といったさまざま分野が合わさり、建設されているのをご存じでしょうか。
これら建設コンサルタント業について益田を中心に行っているのが、益田の中心部・中吉田に本社を構える株式会社三建技術です。
建設コンサルタント業を営む会社が益田に数社ある中で、どのようなビジネス戦略を考えているのか、そしてこの業界で生き残るために必要なものとは何なのか。建設コンサルタントで働く上で必要なことを交え、常務取締役の三輪 宏和さんにお聞きしました。
全国各地で仕事をするために必要な「技術力」
三輪さん 弊社は、道路や橋、河川など社会資本整備に携わる事業を行っています。一般の人がイメージする重機をつかった工事現場で行われるような「つくる」ということではなく、国土・地域・都市整備事業の立案から構想・計画段階での検討業務、さらには地盤・地質調査や設計業務、施工監理、維持管理業務を通じて、社会資本整備全体に携わっています。このような地域の発展に貢献する “建設コンサルタント業” のほかに、民間の顧客へ様々な技術サービスを提供しています。
顧客の要請を受け、社会資本を整備する上での真の課題を掴み、第三者目線で各工程における最適解を導き出し、その地域の発展に貢献すること。それが建設コンサルタントに求められていることです。
また、益田での業務以外にも、東日本大震災の復興関連業務について携わらせていただいたり、山陰道や三隅火力発電所の建設関連業務にも関わらせていただいたりしていますし、近年では建築・不動産分野も新たに力を入れています。
益田の仕事を大事にしながら、県外の仕事を行うようになったのは、約20年前の長い建設業全体の不景気が要因だそうで、益田の仕事がなくなったときの危機感が、違う土地でも仕事をもらえる会社づくりにつながったといいます。
三輪さん 県外での業務依頼はありますが、あくまでも益田が本社なので、地域に根ざした建設コンサルタント業務を意識しています。
手を付けすぎて大丈夫なのかという声もありますが、バランスを見てアクセルを踏んでいますし、有事の際に会社が存続できるよう、様々な選択肢を増やして、多角的な視点を持つことを心掛けています。
複数の場所で、仕事を通じて信頼を得るためには、何が必要なのでしょうか。
三輪さん ビジネスというのは、基本的に何らかの商品を提供し、対価を受け取ることで成り立っていますが、建設コンサルタント業はサービス業だと思っています。
サービスの本質的な意味は、顧客のニーズに応えるために、モノではなく機能を提供することですが、私たちの顧客は「正しく意思決定を行い、計画や仕様(図面など)を確定すること」に対して対価を支払ってくれています。なので、その期待に応えるためには、社員ひとりひとりの技術力が全てなんです。
それと同時に、サービス業であれば、顧客に信頼されないといけないので、人間力も向上させなければと考えています。
私たちのような中小の建設コンサルタント会社は、大手の会社さんのように、専門分野に特化した技術者をたくさん抱えることはできないので、社員それぞれの技術力を総合的に上げる必要があります。そのため、幅広い知識を持ち、顧客のニーズに対応できる技術者を育成することが求められています。
技術力をつけてもらうために心がけていることがあると、三輪さんは話します。
三輪さん 努力をした人が報われるような制度・会社にしなければいけないなと感じています。一般的には、技術力を上げるために勉強したり資格を取得したりしますが、そういった頑張りや業務での成果、顧客の反応をきちんと評価して、賃金に反映できることが理想です。目に見える成果の他に、目に見えない頑張りをいかにキャッチするか。その点を心掛けています。
見えない顧客を意識して
建設コンサルタント業の顧客は、国、地方公共団体等の発注者であるものの、そのサービスを享受する国民に対して目を向けなければならないと聞きます。
コストと品質を考えながら、税金を使うことを意識して、目の前の顧客だけでなく、その後ろにいる地域住民への想いやこの業界のやりがいなどをどのように捉えているのでしょうか。
三輪さん 私たち建設コンサルタント会社は、発注者を通じて快適な社会インフラサービスを地域住民の方々に届けなければなりませんし、民間の顧客には、質の高い技術力をもって技術サービスを提供しなくてはなりません。
公共性のあるフィールドを対象としていますので、社会への貢献度が高く、高度な専門性を必要とするとてもやりがいのある仕事です。また、場所を問わずニーズがあり、仕事の幅が広く、飽きにくい業務内容なので、いつまでもフレッシュな気持ちで仕事に取り組むことができると思います。
三建技術は益田の仕事を中心としながら、全国各地で業務を行っているため、社員の希望によって益田以外の土地での仕事も可能だといいます。社員それぞれの希望にあわせて、働き方や働く場所も変えられる、まさに自分のワークキャリアを体現できる会社だと感じます。
三輪さん やりたい仕事があればそれができる環境に移ることもできますし、様々な経験により技術力の向上にも繋がります。捉え方にもよりますが、チャレンジ精神がある人はいろいろな経験ができる会社だと思います。
とはいえ本社のある益田に対しては、雇用を守り、働き先の一つとして考えてもらえるようにしたいです。あとは、中高生のインターンシップや新職場体験といった社会貢献もしていきたいと考えています。
この業界を目指す人が少なくなっている今、3K(きつい・汚い・危険)から新3K(給料・休日・希望)に変わっているように、この業界の魅力を伝えていく一助を担っていきたいですね。
最後に、これからのビジョンについてお伺いしました。
三輪さん 会社を存続させることを第一に、知恵を絞って、会社が持続的に発展できるように考えています。また、守りばかりにならず、時には挑戦的に、働いてくれる社員を守る “最善の選択” をとっていきたいと思います。
創業当時から、前例にとらわれず、様々な分野について挑戦しているので、私自身そのチャレンジ精神を引き継ぎながら、時代の変化に柔軟に対応しつつ努力を続けていきたいです。それが全て社員の雇用につながると信じています。
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「益田市UIターン者サポート宣言企業 宣言内容」(株式会社 三建技術)
① 新規採用の従業員が気軽に悩みを相談できる窓口を設置します。
② 育児休暇が取得しやすい環境づくりをつくります。
③ 若年者を対象としたトライアル雇用を実施します。
取材:一般社団法人 豊かな暮らしラボラトリー
文責:益田市 連携のまちづくり推進課