「これから先、何をしたいのか分からなくなってしまった」
「今自分がやりたいことって、何なのだろう」
いろいろなことを経験したり、さまざまな人と出会う中で、同世代がそれぞれの場所で活躍している姿に刺激を受けたり、自分の心の中にある違和感に引っ掛かりを覚えたりする人もいるのではないでしょうか。
今回取材に応じてくださった、株式会社松永牧場の藤岡 啓伍(ふじおか けいご)さんは、社会人になる前・社会人になった後の2度、「自分はどうありたいのか」を考える過程を経ました。そして、それぞれのタイミングで自身が納得した行動を起こしていきました。
そんな藤岡さんに、松永牧場での仕事や、プライベートで取り組んでいる筋トレを通じ、自身に起こった変化をお聞きしました。
体を動かす仕事は自分に合っている
藤岡さん わたしが働いている松永牧場の本場には、約5,800頭の牛がいます。そのうち、生後90日から280日くらいの牛(約1,200頭)の餌やりが、わたしの主な仕事です。
わたしの仕事は、朝早くから始まります。
6時に牛舎の中に入り、牛舎の掃き掃除をし、もう一人の職員と一緒に前日に作っておいた餌を撒きます。1,200頭の牛の餌やりなので、12時くらいまでかかります。撒いた餌は、牛が食べていくうちにグチャグチャになってしまうため、そのえさを整える作業を14時過ぎまで行い、そこから翌日の餌の準備をする。これが1日の仕事の基本的な流れです。
牛の餌にもいろいろな種類があり、牛の生育段階に合わせて餌を考えています。また、餌を与えるときに牛の首や体重などをみて、自分の腕が上がっていると実感することもありますし、餌に近寄ってこない牛を観察し、鼻水を垂らしていたり呼吸が荒かったりと牛の変化にも気づくこともあります。餌を与えるだけで終わらず、牛のよだれによって餌にカビが生えないように餌を整えることも行っています。
「こうなっていいのだろうか」という違和感を経て
実は、藤岡さんは学生時代、食品関係の勉強をしており、畜産とは無縁だったそう。しかし、所属していたゼミの先輩が、働き始めてから痩せ細っている姿を見て、食品関係の仕事に就くのは違うのではないかと違和感を抱き、自分はどうありたいのか考えるようになったといいます。
藤岡さん 広島の大学に通っていたのですが、電車に乗っているサラリーマンの姿を見て、「疲れた姿を見せているこの人たちのように、なりたくない」と思っている自分がいました。
そんなとき、農業・酪農求人サイト “あぐりナビ” をきっかけに、松永牧場を知りました。松永牧場のページに「日本一の牧場」と書いてあったのをみて、すごいと感じ、興味を持ち始めました。生まれ育った広島を出て、島根へ行くことに、親から特に言われませんでしたが、大学の先生から止められましたね。ただ、ずっと野球をしていたため、体を動かす仕事が自分には合っていると思い、松永牧場に就職することを決めました。
次の4月で4年目を迎える藤岡さん。
入社当時と比べ、今どんな心境を抱いているのか。そして、働いている松永牧場をどう捉えているのか、聞いてみました。
藤岡さん 体を動かしながら会社に貢献できたらという思いが、心のどこかにあったので、今の仕事は自分に合っているなと思いますね。最初の頃は、仕事のタスクをこなすことで精一杯でしたが、今は天気や気温を考慮しながら、与える餌をどうすればよいか考えるようになりました。
一緒に働いている人は、みんな頑張り屋さんだなって感じます。
朝早くから夜遅くまで頑張っていますし、トラブルがあったとしても、それをなんとかしようとする姿をみて、自分も頑張ろうという気持ちになることが多いです。
魅力的な人になる
藤岡さんの仕事は、動物相手の仕事であるため、思い通りにいかないことがあったり、急に対応しなければいけないこともあります。そんな中で、仕事と仕事以外の時間は、どのように切り替えているのでしょうか。
藤岡さん 益田には多くの温泉があるので、休みの日は頻繁に温泉に行っています。あとは、日常のルーティンの一部として、筋トレもしています。自宅に筋トレ用の道具もあって、ベンチプレスやデッドリフト、スクワットを行いながら、体を鍛えています。
自分をより魅力的に見せたい。
そのために、まずは外見から変えようと考え、体を鍛えることに決めました。
筋トレが習慣化されたことで、いろいろなことを習慣化することにハマったという藤岡さん。
「もっとこうなりたい」
そんな思いが、自身の行動を変えていったといいます。
藤岡さん ひとつのことを習慣化すれば、いろいろな価値をアップデートしていくだけ。わたしの場合は、筋トレからスタートし、食事・睡眠に気をつけるようになり、周りの環境(住環境)を整えていこうとなりました。
続けていくうちに、変わっていく様子が見えるので、楽しいと思うようになりましたし、牛舎の掃除がきっかけとなり、以前は汚かった自分の部屋が今ではとてもきれいになりました。
継続する、習慣化するという意味では、仕事に向けての時間も同じで。
朝のルーティンを設けていて、4時前に起床し、散歩をし、朝食を食べ、筋トレをする。そのおかげか、頭も身体もすっきり目覚めた状態で仕事に入ることができています。
最後に、今後の目標・やりたいことをお聞きしました。
藤岡さん 今は生後90日から280日ほどの牛を担当していますが、これからはもっと大きな牛や小さい牛を育ててみたいです。牛の年齢が違えば、与える餌も変わりますし、牛への接し方も変わる。考えることも増えるのではないかと思うので、自分を高めるためにもいろいろな仕事に挑戦していきたいです。
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幼少期、多くの人が「将来の夢」を考えたと思います。
しかし、いろいろな世界を見たり、経験を重ねていく中で、自分がやりたいことやどんなことをしていきたいかという目標が変わっている人もいるのではないでしょうか。
そんなとき、「自分はどうしたいのか」「今どんな気持ちを持っているのか」と自分の感情に素直になることは大切なのだと、藤岡さんの取材を通じて感じました。
自分のやりたいことを見つめ、自分を問い直す機会を定期的に設けること。
その繰り返しによって、どんな環境にいたとしても、ブレない軸を持ちながら生きていける。そういった人が一人でも増えればいいなと願っています。
取材:一般社団法人 豊かな暮らしラボラトリー
文責:益田市連携のまちづくり推進課