2021年3月31日 (水)

益田のひとづくりおしらせ,ブログ地域づくり益田20地区,北仙道

「地域の牛乳屋さんになるために」 土地に眠る循環を次世代へ

益田20地区を巡る 北仙道地区編

土地と向き合い、酪農を通して日々小さな変化を起こす。

今回の主人公である三宅望実さん・貴大さんご夫妻が経営しているのは、広大な敷地を自由に歩き回る牛や羊たちがいきいきと暮らす、田ノ原牧場だ。

益田市・北仙道地区で生まれ育った望実さんは、数年前にご主人の貴広さんと、実家の耕作放棄地になっていた土地を中心に、【人と牛と土地が共生する、”循環”を創る酪農を目指す】という 新たな挑戦を始めた。

「人の温かみと、小さな生産者で回る「食の恵み」が魅力であるこの故郷で、地域の牛乳屋さんになることが夢なんです。」

こうして酪農を通じて”循環”を繋ぐため挑戦をする二人が、暮らしに表現する想いについて尋ねた。

山地酪農が結び付けたふたり、そして北仙道へ

島根県・岡山県とそれぞれの故郷で育った二人の道が交わったのは、中国四国酪農大学校だった。

学生生活の4年間を、共同生活をしながら実務・研修を通して酪農法を学ぶが、二人は従来の酪農のあり方に疑問を覚えたそう。

「入学して酪農を学ぶうちに、牛になんやかんやしてあげることが好きではないと気づきました。手を加えることで牛自身が弱くなっていく気がしましたし、全てを管理することで、全部が全部人間の仕事になってしまうことに面白さを感じられませんでした。」

偶然にも同じ疑問を持っていた二人は、在学中の研修地として、従来の酪農法ではなく山地酪農を行う岩手県の中洞牧場を選んだ。

「そこで初めて、自然の中を駆け回る放牧された牛をみて、素敵だと感じました。」

この山地酪農とは、人間が食べられない草を牛たちに食べてもらうことによって土地を維持する、という考えが基盤となっている。

つまり、牛は食べたいときに草を食べ、飲みたい時に水を飲むため、人間が行うのは風・水・土を知り、程よく管理をするということだけ。

貴大さん「そうやって自然の中に牛を放してしまえば、そのまま環境との共生になっていくのが本来あるべき自然の在り方であったはず。そこに魅力を感じて、このやり方だったら自分も一生をかけられるな、やりたいなと思いました。」

望実さん「実家の耕作放棄地になっていた土地をどうにかしたいな、という軽いイメージを持っていたのですが、そこで現実的な実家の土地を守っていける方法を見つけた気がしました。」

奇遇にも同じ志を持った二人は、卒業後、中洞牧場での修行を経て、使命感を胸に北仙道に移住することを決断。
こうして、 二人の想いは新たな土地へ受け継がれていくこととなった。

日々の小さな変化の積み重ねが循環をつくる

「土地を荒らすのは一瞬。直すのは一生です。

北仙道に戻ってきた始めの頃は、ひたすら竹林の開墾と雑草抜きを進めるだけで、こんなところなんとかなるんかと…。」

それもそのはず。

何十年もの間ほとんど使われていなかった畑は、荒れ果てて竹が生い茂り、いのししの巣となっていた。あの切り開かれた”牧場”のイメージとは全く反対の景色が、そこには広がっていた。

 

まずは、牛が住める土地に戻すため、”草たちが共生できる環境”へと整備しなければならない。それはいわば、水が流れ、土がとどまって、微生物が生まれ、草が生え、日があたる状態。

このように循環の流れの土台をもう一度作り直す作業がひと段落するまでは、丸2年かかった。

「ある程度までいったら、今度は自然の中に牛を放しました。そのフンは土地の恵みとして、草を生やすための栄養となります。そこでやっと、牛と土地が循環する環境が出来てきました。

そこからは、私たち人間は、ただ牛が住みやすいように土地に手を加えるという地道な作業をするだけです。」

 

移住当時、耕作放棄地だった場所。

 

こうして2年が経ち、そして3年、4年…。

「荒れ果てた土地を開いていったら、やっぱり昔の風景はまだ残っている気がして、そこで初めて自分たちがやっていることの価値を実感しました。

こうやって継続していくと、毎年牛も土地も強くなっていきます。

雑草の種が飛んできて、牛が食べない草が生えたりするので、それを抜いたり整備したりしないといけないしそういう苦労は絶えません。

けれど、自然界では理があって、急激な変化を起こすとその分反動が大きいです。

だから、とにかく些細なことを続けて、小さな変化を起こしていくことしかできないんですよね。私たちが目指す姿は、死ぬ前くらいには人に見せられるように、証明できるようになるんじゃないか、と思います。」

この「小さな積み重ねの哲学」は、酪農を巡る人、土地、そして社会の在り方をも表している。

この北仙道という土地と向き合い、財産として残す

「地道でも正しいことを継続するということはすなわち、儲けることを後回しにして、土地との向き合い方を模索することだと思っています。」

”餓えない程度”に、”正しいことを継続するため”に経済性を考える三宅さん夫婦は、現在、必要最低限の収入を得るために、それぞれ嘱託職員と地域の応援隊員として月の半分を働きに出る生活をしている。

「こういう苦労の上で残したいのは、循環で回る土地です。これが一番の財産であると思っています。」

 

 

「逆に経済性を優先させると、どうしても大規模になり、その結果、人も牛も土地もみんな無理に維持させなければならなくなります。自然にとってそのような大規模さは、必ずしも正義ではありません。」

飽食時代の今、食の価値が低下し、無理をして収益を追い求める酪農でなければ成り立たないという現状。そんな従来の価値観に問いを立て、出てきた答えは、「土地と向き合う」ということ。

これこそが、昨今盛んに叫ばれている ”持続可能な社会の実現” のために、ひとりひとりができることなのではないか、と三宅さんは語る。

 

 

「今でも、野菜の交換があったり自家製の味噌を分けてもらったりと、まさに目に見える生産者が地域内にいるからこそ、私達の酪農ができているのかもしれません。」

もともと北仙道に根付く”循環”。住民それぞれが自分たちの畑を耕し、食を生み出し、ひととの繋がりで巡るという状態は、今も継承されている。

日々の小さな変化の積み重ね。昔から残る土地の”循環”。

これらの価値を次世代に繋げるべく、「地域の牛乳屋さんになりたい」という夢と共に、日々の暮らしの中で、表現し続けていく。




取材:一般社団法人 豊かな暮らしラボラトリー
文責:益田市人口拡大課

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