益田20地区を巡る 西益田地区編
益田市街地から川沿いを車で数十分走らせたところに位置する、清流高津川を囲む豊かな自然が自慢の西益田地区。
今回紹介するのは、この地区にて専業農家として暮らす Uターン者・三浦宏さん の暮らし記である。一度故郷を離れ、再び戻ったからこそ見えた、この地に根付く温かいつながりと共にある暮らしについて伺った。
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「生まれ育ちが西益田。僕はとにかくサッカー大好き少年として駆け抜ける日々でした。」
高校時代までを故郷で過ごしたものの、「サッカーが好き」という純粋な気持ちで、広島にあるスポーツの専門学校へ進学。その後、名古屋の鉄鋼会社で2年勤めた後、知人からの紹介で広島の米屋にて働き始める。
「デスクワークよりも、体を動かす仕事が自分に合っているからと紹介してもらいました。まさか広島で米屋の仕事を、と思ったけど、これも何かの縁だろうと思って働き始めました。仕事内容としては、米の販売に限らず、食品の配達も。それは他人の時間の軸で生きるような、一分一秒を争う多忙な日々を送っていました。」
その広島での10年の間で、ご結婚、そしてお子さんが生まれ、自分だけでなく家族のために必死に生活する毎日を送ることになる。
しかし今振り返れば、あの広島での10年間があったからこそついた自信が、後の地元に戻って農業をするという決断につながったのかもしれない、と三浦さんは語った。
縁が繋がった末に見えた、農業という選択
「農業だったら地元に土地もあるし最低限の設備もあるからできるんじゃないか。」
三浦さんは米屋での仕事の関係上、農業をしている方から話を聞く機会が多くある中で、Uターンを意識し始める。
「実は、益田から出て行く前に決めていたことで、いつかはわからないけど必ず地元に戻って家系を継ごうと思っていました。昔、祖父にそう伝えた時すごく喜んでくれた姿が忘れられなかったんです。」
それまでは、農業は全くの未経験。やるつもりもなかった。しかし『なんとかなるだろう』という自信だけはあった。
そして、三浦さんは33歳の年に地元に戻り、1年の新規就農期間を経た後、「壱農園」を設立する運びとなる。
「方向性が見えるようになるまで10年かかりました。
現在は、ミニトマトやトマト、益田の名産品でもあるアムスメロンを生産しています。
配達業を経験してから生産を始めたからこそ、今後は多くの方に、壱農園の野菜が欲しいと買いにきてもらいたい。これは、遠回りしたからこそできた目標です。」
日々の積み重ねが暮らしに欠かせない「つながり」に
Uターン者として故郷に戻るという上で苦労はあったのだろうか。
「故郷であれど、自分と同じく地元を離れた人が多く、この土地に知り合いが少ない状態だったため、仕事も暮らしも0からのスタート。」
「だからこそ地域の人に声をかけてもらった時はとても嬉しかった。この地域のいいところは、自分を必要としてくれる人がたくさんいることだ、と気づきました。」
こうして徐々に、消防団や、少年サッカー指導員、地域振興のことなど、様々な役を引き受けることになったり、地域での集まりや行事に顔を出したりするようになる。
このような地域活動は、仕事以外で時間が取られ、時には大変だと感じることもありながら、そんな小さな積み重ねが、今の暮らしに欠かせない人脈につながっているらしく…。
「親としては子どもを育てる上でもとても助かっています。特にここのサッカーチームの指導員は、みんな地元の人ですから、サッカーを教えてもらうだけじゃなくて、人間性の部分も見てくれる。そんなお父さんが何人もいてくれると思うと心強いです。そして、この繋がりは仕事にもとても重要だと思っています。」
「今は自分が農業だからということもあるかもしれませんが、自分のペースで働くことができます。都会での暮らしと比べたらストレスはかなり少なくなりました。
もちろん仕事はこれからですし、毎日忙しいけれど、挑戦が巡ってくるからこそ、今が一番楽しいです。
今後は、仕事、暮らし、地域での活動とのバランスをとって、新しいことにも挑戦したいと考えています。土地を活用して地域の人と交流できる仕掛けを作りたいです。考えていることは色々あるので、少しずつ実現していけたらいいですね。」
最後にどのような人に西益田という地域での暮らしをおすすめできるかをうかがった。
「自分も一度都市部での生活をしていたのでわかるんですが、都市部での生活には孤独感を感じていました。そういう意味で言うと、今の生活に孤独感を感じている人にはこういう土地での生活は合うかもしれません。地域でのイベントや行事が多いので、必然的に地域と人たちと関わる機会は多いと思います。あとは、純粋に地域と関わりたい人やそういった関わりを求めている人にはおすすめです。」
取材:一般社団法人 豊かな暮らしラボラトリー
文責:益田市人口拡大課