2023年11月1日 (水)

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困っている人に頼りにされると断れない

匹見地域で福祉の支え手として、活躍される渡邉健一さん。

匹見上地区で生まれ育ち、旧益田市内の高校に入学するために15歳で実家を離れ、高校卒業後は、測量の仕事をしながら5年間ほど全国を飛び回る生活をされていた。

「匹見を出たときに気付いたのが、底まで見えない川があったこと。匹見川は透き通っているから底まできれいに見えるのが当たり前で、匹見を離れるまで川は全部そういうものだと思っていた。」

地元を離れて全国を飛び回ったからこそ、幼少期に当たり前だと思っていた匹見の自然環境が、こんなにも豊かな場所だったのだと気付くことができたという。

「都会と比べて匹見の暮らしは知った顔の中で生活できる。自分の育てた野菜を同じ地域の方同士であげたりもらったり。人と人がつながりながら生活できるところが匹見のいいところ。」

若い頃実家に帰省するのは正月の長期休みくらいだった渡邉さんが、今このように匹見での生活を振り返ることができるようになったのは、父から「匹見に帰ってきてくれないか。」と頼まれたことがきっかけだった。

そんな渡邉さんがこれまで歩んできた道のり、匹見地域の福祉の支え手として活躍する様子、そしてこれからの考えについて伺った。

一女二男の末っ子として生まれ育った渡邉さん。仕事で全国を飛び回っていた当時、父から「兄弟のどちらか匹見に帰ってきてくれないか。」と頼まれた。兄は船に乗って海外を巡る仕事に就いていたため、自分が匹見に帰ることを決心した。

匹見に帰ってくるまで測量の仕事をしていたため、ちょうど募集のあった匹見町役場の技師の試験を受験したところ採用が決まった。採用当初、上司から「匹見町の道を覚えないと仕事ができない。」と言われ、匹見のありとあらゆる道を行き来した。役場時代の大半が土木関係の職場に配属されており、匹見の道路の拡幅に従事した。当時、匹見を走り回った経験が現在も広範囲な匹見地域で活動する基盤となっている。

「自分は断れない性格だ。」

平成の大合併で匹見町と益田市が合併した年に匹見町役場を定年退職し、その後に始めることとなった民生委員・児童委員、保護司、シルバー人材センターの仕事は全て地域の人から頼まれたことがきっかけだった。

【民生委員・児童委員】

地域住民の相談・援助を行う民生委員・児童委員の活動は現在6期目(1期=3年)を迎える。

「匹見で暮らす人は話し相手を求めている人が多いから、家庭訪問だけじゃなくて道路で出会ったときや、畑で見かけたときに話かけて様子を聞いたりしている。」

特に近所同士が離れている世帯や独居の世帯の方など、渡邉さんと会話する時間を楽しみにされていることが想像できる。

民生委員・児童委員は、1つの自治会に1人、もしくは複数の自治会を1人で担当する。現在、匹見地域では単位民生委員児童委員協議会を設置し、14人の民生委員・児童委員と1人の主任児童委員が在籍している。渡邉さんは1期目からこの協議会の副会長を任され、2期目から現在までは会長として活動している。

月に1度益田市内にある13地区の協議会の会長が集う定例会へ出席し、その内容を匹見の協議会に持ち帰り、意見交換を行っている。

民生委員・児童委員の活動内容は多岐に渡るため、様々な分野の研修にも率先して参加し、自らの識見向上に努めながら地域での活動に励まれている姿を伺うことができた。

【保護司】

犯罪や非行をした人たちが再び罪を犯すことがないように支える保護司の活動も15年程行っている。

保護司になった当初は匹見上地区の担当として活動をしていたが、隣に面する道川地区の保護司を担っていた方が辞められてからは、匹見上地区と道川地区の2地区の保護司を1人で担っている。

広域での活動は苦労が多いのではとお聞きすると、

「この辺は事件とか起きることが少ないから、保護司として活動する場面がほとんどない。」

と笑顔で答えられた。

保護司として活動されてきた15年間で、保護司のサポートが必要な場面がほとんどなかったというのは、匹見上地区と道川地区が安全で安心して暮らせる場所であるということの証ではないだろうか。

【シルバー人材センター】

シルバー人材センターの仕事は匹見地域全域を対象に、家庭で困っている草刈り等の作業を引き受けて行っている。

「匹見の人は何に困っているかを自分から言ってくる人が少ないから、会話をして相手が何に困っているのかを読み取るようにしている。顔を知っている分何かしてあげたいけど、作業ができる人が少ないから、全部を引き受けられなくなってきた。」

と、地域福祉の担い手が不足していることに対する危機感を口にされた。

「匹見へのUターンは、帰ってきた本人の親や兄弟が地域の誰かと関わりがあるはずだから、帰ってきた本人もすぐに地域に馴染めて安心して生活できると思う。Iターンの人にも匹見に定住してほしい気持ちを持っている。ただ、自分から関わって行き過ぎると、田舎の人と人との関わりが濃いことが嫌になって、匹見から出て行ってしまうのではないかと、もどかしさもあるのが正直な気持ちかな。」

匹見に住む人を増やして一緒に支えたいという気持ちを持っているからこそ、Iターンの人が追い求めて来た理想の生活とのギャップが生まれないようにしたいという、渡邉さんらしい気遣いを感じることができた。

今後について尋ねると、

「自分にとっては匹見で誰かのために活動することは当たり前なことだから、今やっていることを継続することかな。匹見は近所も離れているからどこまで手を差し伸べられるか不安もあるし、体力的にいつまでやれるかわからないけど、自分が車を運転できるまで、歩いて移動ができるまでは、この地域の支え手としての役割を担っていきたい。」

と、まだまだこの地域の支え手として頑張っていきたいと活力が沸いている様子であった。

自分の限界まで地域の支え手として役割を全うしたい、そのモチベーションはどこからきているのだろうか。

「元々人から頼まれたことは断れない性格で、匹見で生活して、匹見で暮らす人の顔を知っている分、頼まれたら何とかしてあげたいという気持ちが大きくなる。これが今日まで続けることができた原動力じゃないかな。自分にとって困っている人を助けるのは趣味のような、生活の一部のような、当たり前のこと。」

渡邉さんが言葉にされる「断れない性格」は、断りたいのに断れないではなく、困っている人がいたら助けずにはいられないという渡邉さんの「温かい性格」から断れない。ということだと取材を通して実感した。

退職後に始めた地域福祉の活動が既に生活の一部になっている渡邉さんが、今後も匹見地域の福祉の支え手として活躍される姿が目に浮かぶ。

文責:益田市福祉総務課

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