「自信のない自分」
益田市に嫁いで22年、決して人口が多いとは言えない美濃地区だが、今の仕事をするまでは顔も知らないひとの方が多かったそうだ。公民館での仕事は地区のひとを知ることから始まるというが、関係性は一日で築けるはずはなく、その間自信を持てず苦しかったと振り返る。
公民館教室開催時には、ひとりでも多くの方々に参加してほしいとの思いで声をかけていた。ある研修会に行ったとき、集客の悩みを相談したところ、「椋木さんが声をかけまくっているうちはダメだよ」と言下に否定される。求められるレベルが高すぎて、精いっぱいやってきたこと全てを「ダメ」と言われたようで「ショック」だったという。
「ひとを知る、ひとと繋がること」
それからは地区のひとに、それまで以上の尊敬や感謝の気持ちをもって接してきた。事業にかかわること以外にも教えてもらうことも多くなり、ひとを知り自分のことも分かってもらえてきたと実感でき、気持ちが楽になったと同時に「ひととの繋がり」が「おもしろい」と感じるようになったそうだ。
今の仕事を通して地域の住まう方々にどんな気持ちになって欲しいか、と尋ねると「振返ると、楽しかった思い出がいっぱい作れたな、と感じてほしい」と話す。
「〇〇のために」
信念は「こどもたちにとって地域の大人との関わりが大切。その逆も然り。そのお手伝いをする役目。」また、「主人公は地域のひと。一人ひとりがもっと輝けるように。」仕事を通していつも「こどもたちのために」「地域のみなさんのために」と気持ちを注がれている様子が伝わってくる。
今年1月、今はない旧美濃小学校舎の廃材を活用したベンチづくりのワークショップが成功裏に終わる。事前に子どもたちからベンチの図案、色、形を募り、大人たちにはそれを基に廃材を加工してもらっていた。当日は大人も指南役という役割を忘れるくらいベンチづくりに興じ、その「作品」は真新しい公民館の彩になった。感想は、との問いに「地域のひとと深くかかわることができたから事業を進めることができた。事前準備に労力を費やし、苦しかった、けど楽しかった。」
「描く自分の道筋」
公民館主事の仕事も今年で6年目、振り返りと未来にひと言、と質問してみた。「失敗もあったと思うがそれに気が付いてない性格。」と笑い、「やりきってはいない。できるできないではなく、やるしかない。」即答された声には「自信」が感じられる。
美濃公民館では今春より、18歳の新卒ルーキーが配属された。「彼女は力を持ってる子、必要なのは慣れることだけ。」と期待している。同年代の娘息子を持つ優しい「母の顔」だ。
質問の最後は「社会教育」とは?「こうしたら結果はこう、という方程式がない。どんなやり方も正解。」ときっぱり言う。3年目の年、2年間かけて「社会教育主事」の講習を修了し、次の目標は「社会教育士」だ。「自分の道筋」が見えてきた、と笑顔で話す未来は、キャリアを積み重ねていきいきと働く姿しか想像できない。