時代とともに、私たちの環境は変わり、状況も変わります。昔の大人たちでは想像できなかった未来が現在あり、私たちが見ることができない未来を子どもたちは生きていきます。そうした中 で、価値観も変化をしていき、職業そのものの種類やあり方も変わっていくでしょう。
こうした変化に臆することなく、「自分の人生を能動的に生きていくことができる力を育むこと」を目的に、益田市では平成27年より、「ライフキャリア教育」を推進しております。
その一環として、益田市が実施しているのが「対話+」です。本記事では、対話+の紹介、及びそのプログラムにかける主催者側の意図をお届けします。
『対話+』とは
対話+とは、市内の小・中・高校生と地域の大人が、1対1の対話を通して「これからどんな人でありたいか」を考える授業です。普段子どもたちが関わる人といえば、保護者の方々や先生方といった「縦の関係」、もしくは同級生のような「横の関係」の人が多いと思います。対話+で大事にしているのは、そんな「縦」でも「横」でもない、「ナナメの関係」です。
人との繋がりが希薄化する現代だからこそ、気軽に話せるひとを増やすことを狙い、対話+がきっかけとなり、学校を超えて、企業を超えて、ひとが繋がる機会を届けています。
この「対話+」に込められた願いとして、益田で過ごす児童・生徒が「人との繫がりの中で生きていける豊かさ」などの多様な幸福感を育み、彼等の中にこれから必要になる「対話」の文化ができることがあります。幸せは、これまでの仕事観に焦点をあてた【ワークキャリア】でも、どれだけ都会に近いかといった物質的なものだけでは測れません。
だからこそ、「将来、何になりたいか」から「どう生きるか」などの【ライフキャリア】を考える機会が必要なのだと考えています。このように、対話+の授業は、児童・生徒が、人と繋がる上で必要な「対話」の力を身に着けながら、自分達が「これからどう生きるか」を身近にいる地域の大人から学ぶと同時に、地域側にとっても住民同士の関係性を繋ぎ直す”まちづくり”に発展するモデルにもなっているのです。
対話+の具体的な内容は?
益田市では、主に3つのパターンで年間30以上の対話プログラムを実施しています。
以下では、それら3つを順に説明します。
①『地域の大人が対話の機会を届ける、中学校対話+』
1つ目は、地域の大人が対話の機会を届ける、中学校対話+です。中学校の学校区内の公民館と連携し地域の大人を集め、大人用の対話+研修を行います。その研修を受けた地域の大人が、中学校に出張し、先輩として「人生グラフ」という大人の人生を振り返れるワークシートを使い、自らの経験を語ります。そしてその後、対話を通じて、部活や勉強で忙しい毎日を過ごす中学生が今までの自分を振り返る、自己理解を促します。
このプログラムによって、思春期真っただ中の中学生だからこそ、普段親や先生のように利害関係のある人には話せない悩みや相談事を自分で言葉にできたり、地域の大人の姿から将来へのイメージが前よりも出来るようになったりするといった声などを聞いています。また、参加者の大人側も、対話+をキッカケに地域の方や公民館と繋がり、その後の地域づくりに関わるコミュニティーに参加するキッカケにもなっています。
②『地域で働く大人と将来について考える、高校対話+』
2つ目は、地域で働く大人と将来について考える、高校対話+です。高校卒業後に就職する生徒も一定数いる益田市だからこそ、高校生の時点で大人がどんな価値観で、どのような思いで仕事をして、どのように生きているのか、生き方のロールモデルとの出会い、自分の将来について考えるプログラムとなっています。今年から、市内の事業所と協力し、地元企業へ呼びかけ、多くの大人の方々が参加してくださっています。
それにより、高校生の成長に繋がるのはもちろんのこと、高校対話+は学校と企業が互いに連携するキッカケの場になっています。対話+が学校と企業とを繋げると共に、『子どもを育むことが地域のミライをつくること』という共通認識を大人側も再確認できる場となっているのです。
③『対話+を経験してきた高校生から小学生への、小学校対話+』
3つ目は、高校生が少し年上の先輩として、小学生にとっての生き方のロールモデルとなる小学校対話+です。今まで対話+を受ける側として経験してきた高校生が、今まで対話+などで考え、学んできたことの集大成として、自らが語り手となります。高校生自らが小学5-6年生に自分の生き方について本気で語る場を届けることで、小学生も高校生も、ともに成長する機会となっています。
このように多様な対話の場をもつことで、子どもも大人もお互いに自分がどうありたいかを考えるきっかけになっています。対話+を通して気づいた自分の気持ちや、新たなつながりから活動が生まれています。また、対話+を児童・生徒の時に受けた世代がこれからは大人の側で児童・生徒に対話+届けていく、そんな流れもこれからどんどん増えていくはずです。