2021年3月17日 (水)

おしらせ,おしらせ益田のひとづくり地域づくり益田20地区,道川

辿り着いたのは、囲炉裏とともにあるマイペースな古民家暮らし

益田20地区を巡る 道川地区編

益田市内の山道を進んだその奥、広島との県境に位置する道川地区。

山の中に小さな集落がぽつぽつと並ぶその中に、5年前にIターン移住した本間篤誌さんは暮らしている。

「昔から漠然と『日本昔話』のような生活に憧れていて、たまたまそれを目指せる地域が道川でした。今は、より自分が心地いい生活のバランスを見つけようと、試行錯誤する日々です。」

40年以上もの都会暮らしを経て、林業との運命的な出会いをきっかけに、裏山に囲まれた、囲炉裏のある空き家での生活を始めてからはや5年。
そのいきさつや、道川でこそ実現した幸せの形を尋ねてみた。

林業との出会いと、そこから繋がった理想の田舎暮らし

生まれ育った千葉県では、20年以上街で仕事をしていたという本間さん。

「保険代理店で勤めている時は特に、『万が一こうなったらどうしますか?』という会話が日常的な生活。ただ、都会での暮らしは決して金銭的にも楽ではないため、そこに生きづらさを感じ、ただ漠然と田舎暮らしに憧れを持っていました。

実際、林業の道へ進もうと思ったのも、お昼に山で食べる弁当がとにかくおいしくて感動してしまったのがきっかけでした。」

都会での生活で苦労が積み重なった末に、たまたま出会った林業就労研修を受けたのが当時45歳。勢いで林業の仕事に就くことになったのだそうだ。

しかし、林業のハードさは思った以上で、心身共についていけず挫折してしまう。

ここで林業をあきらめかけるも、自然の中にいることが好きなことは変わらず、何かいい道はないかと模索していた頃、偶然テレビで見つけたもの。それが島根県が支援していた”半農半X”という制度だった。

”半分農業をし、半分自分で業務をデザインする暮らし”

これなら「半分なら好きな林業ができる気がする!」という希望を持ち、志望した結果、とんとん拍子で3年間の地域おこし協力隊員としての仕事や住まいが決まっていった。

「僕は、元々漠然とした憧れは持っているけど、人生に対して大きく変化を求めないタイプだと思います。だからこういった選択の時には、準備万端で決めることは少なく、流れというか勢い、半分は逃げの決断もしました。

その結果、今の幸せな生活に行き着いたということは、それで人生なんとかなるものだということなのではないか、と思うんですよね。」

「田舎暮らしは都会人には難しい」と言われたけれど

しかし実は当初、『豪雪地帯の道川は、都会人には難しいよ』と言われていたようだ。

それでも、憧れだった林業に携われること、憧れだった囲炉裏のある生活が叶うこと。
このような好都合な条件が揃っていた道川で、本間さんは新たな生活をスタートさせることを決断した。

 

本間さんが就任した林業部門での地域おこし協力隊のテーマは、”自伐林家”。

従来の大規模林業ではなく、一人でもできる範囲で林業に関わりしろを持つという趣旨の下、3年間の研修を受けた。

そうして本間さんは、いきいきと、自分のペースで山に携わるようになったそう。

協力隊としての任務完了後の今も、継続的な遊歩道作りをマイペースに続けている。来年からは遊歩道の先にできた頂上スペースを、人々が集まって自然観察ができる公園やイベント会場にする計画を進めているようだ。

「確かに、初めてこちらに来た時は、こんなの遊び場にできないと思ったのも事実です。

何も知らない僕が、自然はきれいなものではないと現実を突きつけられた時だったと思います。それでも、山に携わること自体は楽しくマイペースにできるので、今は自分の遊び場を作っているような感覚でやっています。

だから林業は、今では仕事というよりは、自分の楽しい生活を支える手段になったとも言えるのかもしれません。」

本間さんが林業の先に見つけた”理想の田舎暮らし”、道川暮らしとはいかなるものなのか。さらに詳しく話を聞いてみた。

道川でこそ実現する、究極にマイペースな暮らし

「僕にとって一番の理想は、お金を極力使わず道川だけで暮らすということなんです。」

現在、”地域の便利屋さん”として、農業や加工業などのお手伝いで報酬をもらうことで生計を立てながら、究極に質素な暮らしを送っている本間さん。

月々の生活費はなんと約5万円だそうだ。

もちろん、この暮らし方を維持するためには努力が必要だ。

例えば、月二回の市街地への買い出し以外の大きな移動を控え、仕事も地区内にできるだけ制限すること、

ガスと灯油の代わりに、最小限の電気と薪をエネルギー源にすること、

地域内で、豆腐造りやしいたけ栽培、米作りなどのお手伝いを通して、お金や食べ物などの対価をもらうこと。

こうした日々の工夫と努力で、「”今使う以上に稼がなきゃいけない”という一般的な価値観」が、今は必要なくなったという。

これは都会で住むにおいては考えられない価値観だろう。

「お金を稼がなくてもいいとなると、確かにその分工夫と辛抱が必要になります。けれど、そのために何をするかはマイペースに決められるので、ずいぶんとわがままになれるんですよね。」

がんばる自分、めんどくさくなる自分、怠惰な自分、それに開き直る自分。

全部含めて自分であり、その自分のバランスを好きなように保つことができることに、心地良さと幸せを感じると語る本間さん。

移住当初は目的であった林業も、今や実現したい営みの一部、または手段となった今、本間さんはオリジナルの田舎暮らしを表現している。

 

 

「たまたま自分の憧れの生活を目指せる地域に行き着いて、恥じらいもなく今までの人生の中で一番幸せといえる今を噛み締めています。」

お金以外の資本にあふれる道川でこそ叶う、生活を自由にデザインできる田舎暮らし。

どのようにデザインするかは、すべて自分次第。

取材:一般社団法人 豊かな暮らしラボラトリー
文責:益田市人口拡大課

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