益田糸操り人形保持者会 会長
岡﨑 文宏
“糸”で人間の感情を表現する。
技術力よりも、想いの方が大事なんです。”糸”を通して、人形に魂を吹き込む。それは人間の幸せ、喜び、憎しみ、悲しみといった感情を表現するということ。どれだけ糸の操り方が上手くても、自分自身がその人形になりきらなければ、物語自体が死んでしまう。この想いは決して熟練者からの教え込みでは培われない。自分で人形の気持ちを考え抜くしかないんです。自分がどれだけ感情移入ができるか試されます。自分の想いと人形の動きが合ったとき、そして観客からたくさん拍手をもらったとき、あの感動は言葉には表せないものがあります。
思い返せば、会の参加のきっかけは人数合わせでした。知り合いの誘いで、「このままでは会が成り立たないから」ということでしぶしぶ。そんな私も、今はなんとしてでもこの文化を後世に守り伝えなければと強く思っています。今では明治からの人形・手法で上演するのは、全国でも我々の会だけになってしまいました。糸操り人形の魅力を確信しているからこそ、たくさんの人にこの魅力を届けて、担い手を増やしていきたいと思います。